preface 〜はじめに〜
失礼・非礼が許されない場面
生きとし生ける者、すべて「死」から逃れることはできません。
しかも、「天寿を全うする」ことのできる人は決して多くはありません。
それだけに「死」を身近に迎えた家族の悲しみは、計り知れないものがあります。
厳粛な事態であるだけに、エチケット・マナーには細心の注意が必要です。
基本線を常識としてきっちりと心得ておかないと、社会人として通用しません。失格の烙印を押されてしまいます。
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chapter 001 危篤の知らせ
危篤の知らせを受けたら
通常、危篤の場合は肉親だけにしか知らされません。しかし、特に縁の深かった上司や親友などの危篤の知らせを受けることは、ないことではありません。
そのようなとき、知らせを受けた側は、できるだけ急いで駆けつけるべきです。
服装については、非常識に派手すぎたりくだけすぎているという状態でなければ、原則的に着替える必要はありません。
気を回しすぎて黒服に着替えて行くことは絶対にやめましょう。その人の「死」を待ち構えているようで、決定的なマナー違反となります。
先方に到着したら、控室か廊下に待機して家族の指示に従います。そして、いざ面会ということになって、まだ病人の意識がはっきりとしていたら、悲痛な表情をしたり、涙を見せたりすることのないようにしてください。
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chapter 002 香典
§.1 香典はいくら包んだらよいか?
昔から「慶事に少なく、弔事に多く」とあるように、香典は心づもりよりも、幾分多い金額を包んだ方が無難であるといわれます。
香典は、遺族を少しでも援助するという意味で贈るものですから、一家の主が亡くなったときには多く、その他の家族の場合はそれよりも少なめに、というのが常識的な判断です。
金額の目安としては、五千円を基準にすればよいでしょう。特に世話になった方には一万円が妥当です。
また、香典には「目上には薄く、目下には濃く」という考え方が伝統的にあります。殊に働き盛りに亡くなった同僚や部下に対しては、少なくとも一万円以上を包むべきでしょう。
なお、連名で出す場合についてですが、常識のある喪主を困らせてしまうのが「8名で五千円」というようなケースです。率直に言って、これは非常識といわざるを得ません。
香典返しを8名に送ったら喪主側は赤字。損得勘定を持ち出す場面ではないのですが、悲しみをこらえ、悲しみに浸る間もなくしばらくは動き回らなければならない喪主を損させてしまう結果となります。
気持ちの問題だからと安易に連名にして安直な額を包む姿勢は改めるべきです(→もしも、そうせざるを得ない場合は、渡す際に香典返しを固辞してください)。
「課を代表して敢えて一人から」の方が、もしくは個別に三千円ずつ包んだものを束ねて渡される方が、あるいはひとりあたり三千円程度になるような金額を包む方が返す側にとってはありがたく処理しやすいものなのです。
殊に上司が喪主である場合は気をつけましょう。
十分な配慮が最も要求される場面であると心得ておいてください。
- 一段落ついて、葬祭の記帳取りまとめ・収支計算をするに際して「決してありがたくないわけではないのだけれど・・・こんなことを言うべきではないのだけれど・・・、こういうのが一番困るんだよなぁ・・・」とため息をつく喪主が多いことは意外と知られていません。
でもそれは当然のことです。なぜならば、喪主経験のある人でなければわからない独特の「悩み」であり「苦笑」であるから。
しかも喪主なんて一生のうちに一度か二度経験するかしないかという実に特殊な立場。だから、みんなよくわかっていないのです。
「喪主の気持ちまで配慮して香典の準備をしましょう!」なんて言われても、そもそも「喪主の気持ち」が理解を超えています。
・・・このページをお読みになっているあなたは非常にラッキーかもしれません(・・・テ・マ・エ・ミ・ソ)。
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§.2 香典袋の表書きはどうしたらよいか ?
ほとんどの場合、市販の袋を使用しますが、それで礼を欠くことにはなりません。それで問題はありません。
ただし、正式な香典は新しい紙幣を半紙で包んで金額を書き、さらに奉書で包み、白黒の水引をかけます。この場合の水引は、黒を右にして結び目はこま結びで結び切りにします。
表書きは、薄墨で中央上段に
- 仏式であれば・・・「御香典」・「御仏前」・「香華料」・「御香料」
- 神式であれば・・・「御玉串料」・「御神饌料」・「御榊料」など
- キリスト教であれば・・・「御花料」・「御弔慰料」
など。
宗派に関係なく使えるのは「御霊前」です。
そして、下段中央に自分の名前を書きます。
多勢からの場合は、表に全部は書き切れませんから「経理部一同」等の総称を書き、中にその内訳を書いた紙を入れておけば大丈夫です。なお、包むべき「金額」については前項を参照のうえ、くれぐれも喪主に失礼のないように、また余計な気遣いをさせないよう十分に配慮してください。
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§.3 香典はいつ誰に渡したらよいか?
いつでなければならない、という確たる決まりがあるわけではありませんが、できれば通夜や弔問のときなど、なるべく早い時期に渡した方がよいでしょう。
もちろん、葬儀や告別式のときでも構いません。
早い時期であれば遺族に直接手渡しします。葬儀や告別式のときであれば式場受付に出すか、または祭壇に供えます。
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§.4 香典返しを受け取った場合の礼状について
礼状を出す必要はありません。
理由としては、香典返しは人の不幸にまつわっており、本来であれば進んで受け取りたいとは思わない品であるからです。
ただ、遺族にとっては、葬儀前後のあわただしさから解放されて、しみじみと寂しさを実感し始める頃ですから、慰めの手紙・メールを送るか、親しい間柄であれば訪問して力づけてあげるのもよいでしょう。
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chapter 003 通夜と告別式
§.1 通夜と告別式は、両方とも出席しなければならないか?
もともと通夜は、遺族や近親者など特に親しかった人が、遺体と一夜だけ生前同様のおつき合いをして故人を慰めようとするものです。したがって、この趣旨からすればあまり親しくない人は遠慮すべきものでした。
ところが、今日では一般の弔問客でも通夜に出るようになりました。
よって、もしも都合が悪くて告別式に出席できないということであれば、通夜だけでも差し支えありません。
ただし、通夜に弔問する人で、近親者や特に親しかった人以外は、夜の7時か8時頃出席して通夜の読経が済み次第退席した方がよいでしょう。
たとえ引き止められたとしても、通夜の宴に参加して腰を落ち着けることは避けてください。
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§.2 遠方でいずれにも出席できない場合はどうすべきか?
直ちに弔電を打って下さい。
さらに、香典をあらためてお悔やみの文と同封して郵送して下さい。
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chapter 004 弔問
§.1 それほど親しくない場合の「とりあえず弔問」のマナー
単なる知人関係・仕事の上での交際という程度で弔問に行ったのであれば、玄関先でお悔やみを述べて辞去するのが礼儀です。
取り次ぎの人にお悔やみの言葉を述べて、わざわざ喪主を呼び出さなくても差し支えありません。
なお、その場合、名刺の右肩に「お悔やみに参上致しました。」とか「謹んでお悔やみ申し上げます。」と書いて置いてくると好印象を残せます。
しかし、もし既に礼拝の準備が整っているのであれば、上がって霊前にお線香をあげさせてもらってください。この場合でも、焼香が終了次第辞去するのは言うまでもありません。
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§.2 故人と対面すべきか?
納棺が済んでいないうちに弔問に行ったときには、遺体が安置されている部屋とは別の部屋で遺族にお悔やみを述べます。
この際、遺族から「会ってやってください」と言われない限り、自分から「拝ませてください」とは切り出さないことです。
また、遺族から対面を勧められても、気が進まなければ「悲しみが増すばかりですから(その他・・・自分自身、心の整理がついておらず、悲しい現実を受け容れられる状態にございませんので)、遠慮させてください」と辞退しても礼を失することにはなりません。
実際に対面する場合は、遺体から半歩下がって座り、軽く両手を畳につけて少し頭を下げてお辞儀の姿勢のまま、遺族が顔の白布を顎の方から軽く上げてくれるのを待って、深く一礼します。
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chapter 005 焼香
焼香や線香のあげ方
焼香には座礼と立礼があります。
座礼の場合の順序としては、
- 立ち上がって、中腰で仏前の三ひざ前まで進む。
- 一度そこで腰を落とし、遺族に挨拶し、故人の遺影にも一礼する。
- ひざで仏前に進み、設けの席について合掌する。
- 右手の親指・人差し指・中指の三本で香をつまみ、額までおしいただいてから香炉に落とす。正式には三回とされているが一回でも可。
- 合掌する。
- 再び遺族に挨拶して自席に戻る。
立礼の場合も、ほぼ上記に準じて行います。
線香は通夜や告別式の弔問の場合にあげますが、線香についた火は手で扇いで消してください。
なお、これらはすべて一般的なルールです。宗派によっては若干異なるスタイルを指導・奨励していることもあります。
いずれにせよ、死者をしめやかに弔う気持ちがあれば、表現方法に違いがあっても問題はありません。
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chapter 006 告別式
告別式に列席するときの服装
参列者の服装は、亡くなった人と特に親しく遺族に近い側として参列する場合でなければ、黒いスーツの略礼装で差し支えありません。シャツは白、ネクタイは黒、靴も黒であることは言うまでもありません。
もしも、旅行先や離れた仕事先から駆けつけるような状況下で、黒いスーツに着替えることが不可能な場合は、5〜6センチメートル幅の黒い布を喪章として腕に巻きます。
ちなみに、はじめから黒服を着ている場合、この喪章をつける必要はありません。
ネクタイピン・カフスボタン等、カラフルに光る物は身につけないのが常識ですが、つける必要がある場合は、弔問用の光沢のない黒色ベースのものにするべきです。
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chapter 007 お悔やみの言葉
遺族に対するお悔やみの言葉
「このたびはとんだことで、誠にご愁傷様でございます。」・「このたびは突然のことで、本当にお力落としのこととお察し申し上げます。」あるいは、長い間看病した遺族に対しては、「ご看病の甲斐もなく、本当に残念でございましょう。心からお悔やみ申し上げます。」と静かに悲しみを表現すればO.K.です。
また、たとえ一言も口を聞かなくても、遺族と視線を合わせてお辞儀をしたときに深い哀悼の表情があらわれていれば、どんな名文にも勝るお悔やみとなります。
なお、弔問に際しての会話で、「またまた」・「かさねがさね」といった重ね言葉は不幸が「重なる」ということで、忌み言葉になっています。注意しましょう。
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chapter 008 法要・法事
§.1 死後の法要について
法要は正式には四十九日までに七日毎に行うことになっています。
最初の忌日が「初七日」。これは亡くなった日を入れて数えます(=亡くなった日が1日目)。例えば、12月4日に亡くなったとしたら10日が「初七日」です。
初七日には、ごく親しい人たちが集まって僧侶に読経してもらい、その後精進料理で接待します(…→葬祭センター等を利用する場合は、告別式の後、連続してやってしまうケースもあるようです)。
残り五回の法要は、家族だけで僧侶に読経してもらったり、お寺参りをしたりします。
四十九日は忌日が終わったという意味で、この日も近親者を招待して供養した後、忌明けの宴を催しますが、初七日よりも盛大になります。
こうして四十九日経つと、喪に服す期間が明けます。
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§.2 法事に招かれた際の留意点
法事に招かれたときは、正式の喪服で行く必要はありません。
一年・三年の近い忌には、スーツの色を地味にする程度で問題ありません。ネクタイもあまり派手な色・柄でなければ必ずしも黒無地である必要はありません。
さらに年を重ねるにつれて、喪の表現を少なくしていきます。
法事に行くときには、お供え物を持って行くのが常識ですが、花や供え物が重なってはかえって迷惑になりますから、お金にするのが一般的です。
金包みの表書きは、「御供物料」・「御花料」として、水引は黒白よりも白一色・水色と白色等がよいでしょう。
相場は故人との親密さの程度にもよりますが、五千円を一応の目安として考えてください。
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